鬼瓦「ケイティ・キング」

 瀬戸内海に浮かぶ小さな島に2012年4月1日から7月31日まで田村友一郎が4ヶ月間滞在し制作した作品。19世紀の英国の科学者によって写真に撮影された幽霊をモチーフとして制作された鬼瓦と、それを制作する地元の鬼瓦職人や窯焼き職人や島民の協力を得て今は使われなくなった窯を掘り起こすところから鬼瓦を焼くまでの鬼瓦を巡る映像作品。
 アトリエとして使用していた島の中学校の理科室に入ってみると古びた実験器具や薬品の中に何やら動いているものを発見する。それは「ラジオメーター」というもので、19世紀の英国の物理学者ウイリアム・クルックスが発明した光を受けて真空の管の中で風車が回るという実験道具であった。さっそくウイリアム・クルックスという人物を調べてみると、彼は科学者でもありながら、心霊現象の研究家としても有名であった。そのなかで、彼は当時流行していた降霊術に参加し、霊媒師(medium)が召喚した魂が物質化したケイティ・キングという女性の幽霊の撮影に成功する。写真にははっきりと女性の姿が写っている。その写真をもとに鬼瓦職人が「ケイティ・キング」の鬼瓦を制作する。
 ひとの念や想いなどから作り上げられた日本の「鬼」という存在と、西洋において「霊」の物質化したケイティ・キングはどこか共通するものがある。この2つが「鬼瓦」というメディウムを介して出会うことはできるだろうか。メディア・メディウムというものをあらためて問い直す鬼瓦1点と映像作品1点から構成される作品。

鬼瓦「ケイティ・キング」写真